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仮面夫婦となったわたしが成功した完全なる離婚

人も羨む恋愛の末に結婚をした私たちでしたが、子どもを育てることに夢中だった若い頃を何も考えずに過ごして来たら、あっという間に五十路を迎えてしまいました。

元々、親に反発して他人行儀だった長女もいつしか遠方で別所帯となり、滅多に帰郷することもなくなって、いつの間にか妻とも殆ど会話らしい会話をすることもなく、世間で言う仮面夫婦になっていたことに気づいて愕然としたのです。

仮面夫婦の憂鬱な朝

夫婦の部屋が一緒だったのは新婚当初だけで、その後は子どもの保育が優先されて、私が別部屋へ追い出されるようになると、朝飯の用意もしてもらえずに出勤することも少しずつ増えて来たようでした。

看護師をしていた妻は子どもの養育のために休職をしていたのですが、恩恵は夫にまでは及ばなかったのです。

長い間の小さなことの積み重ねが、いつしか大きな災いになるのだと、その時は分かりませんでした。

子どもが小さい頃は余り気にもしなかったのですが、今から思えば仮面夫婦の予兆だったのかも知れません。

仮面を脱ぎ捨てたい誘惑

仮面の原因は夢を放棄した自分の過去にあった

若い時は「愛さえあればそれで充分」という甘い考えで始めた結婚生活にも、家族を養わなくてはならない現実は容赦なく襲いかかって来ます。

この年になるまでに転職を3度経験しましたが、自分の夢を実現するためと言うよりは、生活苦から抜け出したいという妻の要望を受け入れた結果だった気がします。

新しい出会いが意識させた仮面の終焉

仕事の場所を変えれば運命も変わると言いますが嘘ではなく、新しい職場で運命の出会いというのでしょうか、妻とは180度違う30代後半の事務員と一緒に食事をする機会に恵まれました。

名前が会社にバレるとまずいので、仮にA子としておきます。

話を聞くと、A子は前のご主人からDVを受けて離婚しており、いわゆるバツイチだったのですが、幸いなことに子どもはいませんでした。

A子はいつも定時になると帰るため、生活態度はくそ真面目なのかと思っていましたが、アフターファイブには全く別の顔があることに気づかなかったのです。

何度目かの食事を同席をした時に、思い切って仕事以外の私生活について尋ねてみました。

最初は戸惑いを見せましたが、本当は誰かに聴いて欲しかったのか、やがて堰を切ったように自分の秘密について話し始めたのです。

A子に言わせると趣味と実益を兼ねて、高級クラブでホステスとして働いているそうです。

仕事は楽しく、収入も昼間の会社の給料よりも多いので、短期のアルバイトのつもりだったため不満も無かったのですが、最近は二重生活を送ること自体に疲れてしまい、止めようか迷っているとのことでした。

誰か自分を救い出してくれるホワイトナイトを待っているのかも知れない、ふとそんなことを想像してしまいました。

そして、仮面夫婦としての生活が終盤に近いことを感じていたわたしにとって、新鮮で危険に満ちた相手を前にして、なぜかときめきを感じていたのです。

仮面を脱ぎ捨てる決断

偶然の不倫

世間並みより少し上くらいの年収程度の私には芸能人の不倫記事のような劇的な展開は望むべくもなく、A子のクラブへ顧客として行くことは経済的に困難でした。

プライベートで会うことは難しかったのですが、それでも日曜日の昼間にはお互いの悩みを語り合うまでになっていました。

二人の仲が接近するのにそれ程の時間はかかりませんでした。

月曜日は大抵のサラリーマンにとって幾分か憂鬱になりますが、A子の夜の店が休日となるので誰にも気兼ねせずに夜のデートが出来るわたしにとっては、爽快な一週間の始まりとなります。

その日、街の居酒屋で飲み過ぎたわたしは、気が付くとA子の自宅で介抱されていたのです。

当然のことながら成行で家には帰れませんでした。

わたしの”不倫”の始まりとなったのです。

別居の必然

毎日黙って出かけるわたしを、妻は気に止めるわけでもなく、生活費さえ入れて貰えればそれでいいと無視していたようです。

娘の教育を終えてからは、妻も暇を持て余していたせいか、市内の病院でパートとして働き始めていました。

住宅ローンは払い終えていましたが、もしわたしが家を出たら困るに違いないと多少の心配もあって、中々離婚を切り出せないでいたのです。

空気のような存在である妻に愛情が全く無くなったのかと自問すれば、長年連れ添った仲でもあり多少の未練は残っていたのですが、A子と一緒にいる方が間違いなく充実感があって、素の自分をさらけ出せて自然なので、やはり不自然な仮面を脱がなければならないと考えました。

不倫が偶然に始まったのなら、別居は必然の結果でした。

相談相手がいない!

不倫を責める友人や親戚

人生の後半を共に過ごしたい相手が見つかったこともあり、出来れば余り波風を立てずに今まで被って来た仮面を脱ぎ捨てようと考えましたが、妻に対して”不倫”のままで離婚を切り出せば冷え切った関係とは言え修羅場を招きかねません。

今後の生活のことや法律上のことなどを含めて誰かに相談したいと思いましたが、友人や親戚には内緒にしていたこともあり、わたしの不貞を責められるのがおちです。

無料弁護士相談の虚しさ

仕方なく無料と銘打った法律相談を受けたところ、”不倫”が原因の離婚は無理筋だそうで、不倫関係の解消が第一だと勧められました。

一般の弁護士さんは合法的な案件であれば裁判をして勝つことが出来るので積極的な姿勢を取りますが、負ける可能性の大きいことには首を突っ込むことを避けるようです。

切羽詰まって探偵事務所に相談

目にとまった探偵事務所の看板

そんな時に目にしたのがある探偵事務所の広告でした。

そこには「離婚」「浮気」「秘密厳守」の三文字の宣伝文句が並び、思わず自分の行動を見られているような気持ちにされたのです。

どうやらこの事務所では弁護士事務所とは違って、顧客が”被害者”ではなく”加害者”の場合でも先入観を持たずに相談に応じてくれるようなのです。

テキパキとした相談員

早速対応してくれた相談員さんは笑顔で熱心にわたしの話に耳を傾けて下さいました。

無理難題を持ち込んだわたしに対して困った顔もせずに、要望整理をしてくれたのです。

希望する要件の第一が「不倫を見つからずに円満離婚すること」で、更に「その際に離婚条件を経済的に可能な限り有利にすること」、そして「別れる妻を不幸にしないこと」というものでした。

調査員が動く

探偵事務所の調査員は敏速に動いてくれたらしく、最初は妻の日常生活を監視することから始めました。

調査員からの途中報告があった時に、妻の勤め先での交流関係が徐々に明らかにされて来ました。

上司か同僚なのか親しげに手をつないで歩く写真を見せられた時には正直驚きました。

ただ二人が深い関係になっていることまでの、それ以上の証拠が得られなかったのです。

いずれにしても仮面を被っていたのはわたしばかりでは無かったようです。

後ろめたさを抱えていたわたしにとって、ささやかなギフトとなったことは確かです。

それから数ヶ月して調査員から急に驚きの連絡が入りました。

環境整備が整ったので正式に離婚交渉を進めて構わないとのアドバイスでした。

調査員によると妻側の浮気現場を押さえようとしたけれども現実は困難だったため、非常手段に頼らざるを得なかったと弁解し、ニヤニヤするだけで方法については明かしてくれませんでした。

完全なる離婚へ

半信半疑だったのですが、意を決して妻に離婚の話を申し出たところ、最初は戸惑った風情を見せたものの、直ぐに円満離婚をすることに同意してくれたのです。

不動産は妻の名義にして、妻からは他の金銭的要求を放棄することで結着致しました。

離婚協議書をつくって財産分与や清算条項の取り決めまでを、紹介して頂いた弁護士さんが全てやってくれることになったのです。

もし、あの時に探偵事務所に相談していなかったら、今も罪悪感を抱えながらの別居を続けたままだったでしょう。

あるいは妻側から離婚訴訟を起こされたならばと考えると、ゾッとします。

現在は家を出て、A子と一緒にようやく落ち着いた生活を再建しています。

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